【インボイス】免税事業者にはデメリットだらけ?3つのメリットと負担軽減方法を紹介
2023年10月1日から「インボイス制度」が導入されましたが、登録していない免税事業者も多いのではないでしょうか?
「STOP!インボイス」という反対運動もおこっており、小規模事業者を中心に不満の声が上がっている当制度。
いままで不要だった消費税の納付義務が発生するうえに経理の仕事も増えるので、登録したらデメリットだらけですよね。
私もフリーランスとして活動しているため、納得できない気持ちはよくわかります。
しかし私の場合、インボイス登録することで結果的に仕事が増えて収入アップにつながりました。
申請したときは憂鬱な気持ちでしたが、いまでは免税事業者から課税事業者になって心から良かったと思っています。
今回は、インボイス登録済みの筆者が
- 免税事業者が登録するメリット3選
- 3つの負担軽減措置
- 登録しなくていい5つのケース
- 登録から納税までの3ステップ
について解説していきます。
本記事がインボイス制度で悩んでいる人の助けになれば幸いです。
ぜひ最後までお読みください!
このように悩んでいませんか?
- インボイスを導入したら廃業してしまうかも…
- 免税事業者が登録するメリットを知りたい
- 登録しなくてもすむ方法はある?
免税事業者のインボイス登録はデメリットしかないと言われる3つの理由
インボイス制度は、適格請求書(インボイス)を交付・保管することで事業者が正確に消費税を納めるために導入されました。
納める消費税額は仕入にかかる消費税を差し引いて計算(仕入税額控除)しますが、インボイスを発行していない取引は控除を受けられません。
これまでと同様に取引するには、双方の事業者がインボイス制度に登録する必要があるということですね。
インボイスの概要を把握したい人向けに動画を制作したので、良かったらこちらもどうぞ。
これにより大きな打撃を受けるのが、課税売上が1000万円以下の免税事業者である小規模事業者。
インボイス制度の影響を受ける主な職種
- ライター
- デザイナー
- カメラマン
- 俳優・声優
- 弁護士 など
制度の普及により廃業を考える人も少なくありません。
それほどまで「インボイスはヤバい」と言われている理由を3つ解説していきます。
インボイス登録はデメリットしかないと言われる3つの理由
- 売上が減少する可能性がある
- 事務作業が複雑になる
- 登録内容が一般公開される
1.売上が減少する可能性がある
インボイス制度に登録した免税事業者は課税事業者となり、消費税の納税義務が発生します。
税負担が増えるのは小規模事業者にとってダメージが大きく、インボイスを登録しない選択をする人も多いでしょう。
しかし、インボイス未対応を理由に仕事が減ってしまうリスクがあるため、免税事業者のままでいるほうが良いとは限りません。
買い手側も消費税の負担を抑えたいので、なるべくインボイス登録事業者と取引したいと考えるのは当然です。
- 登録する → 消費税を負担する
- 登録しない → 仕事が減少する
このように、インボイスに対応する・しないにかかわらず売上が減少する可能性があります。
これが「ヤバい」と言われる一番の理由ではないでしょうか。
2.事務作業が複雑になる
いままでやらなくて良かった業務が増えるというのも小規模事業者にとっては痛手です。
インボイス対応後に増える事務作業
- 消費税の計算
- インボイスの交付・保管
- 税額の申告と納税手続き
- 書類のフォーマット変更 など
ザッとあげましたが、細かい作業も含めるともっとありそうですね。
インボイスの交付記録は原則7年間保存しなくてはなりません。
freee会計などのクラウド会計ソフトを使用することで、保管場所の圧迫や紛失を避けられるでしょう。
3.登録内容が一般公開される
フリーランスや個人事業主がインボイス発行事業者になると、登録内容が公開されてしまうので注意が必要です。
国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイト」でインボイスの登録番号を検索すると、だれでも登録内容を確認できます。
法人であれば会社名と所在地を検索されても問題ありませんが、個人だと本名が表示されるので抵抗がある人も多いはず。
悪用されるリスクがないとは言い切れないため、登録する場合は屋号の設定や取引先を慎重に選ぶことで対策しましょう。
免税事業者がインボイス登録するメリット3選
「やっぱりデメリットのほうが多そう」
「面倒だから免税事業者のままでいいや」
このように思った人も正直多いと思います。
ただ、登録するメリットを知らないといつの間にか廃業に追い込まれる可能性も。
最初から「絶対登録しない」と決めつけず、最後まで読んで判断してみてください。
免税事業者がインボイス登録するメリット3選
- 取引が円滑に進みやすい
- 補助金制度を活用できる
- 業務の効率化が期待できる
1.取引が円滑に進みやすい
インボイス発行事業者になることで顧客を失わずにすみます。
先ほどインボイス未対応だと仕事が減るリスクがあると言いましたが、それでも登録していない小規模事業者はまだまだ多いです。
つまり、インボイスに対応できるだけで同業者との差別化になり、既存顧客だけでなく新規顧客も獲得しやすくなります。
以下の二人のうち一人を採用する場合、どちらが選ばれやすいでしょうか?
- Aさん:インボイス未登録 実務経験5年
- Bさん:インボイス登録済 実務経験3年
経歴はAさんのほうが上ですが、実務に問題がないレベルならBさんを採用したい課税事業者が多いと思います。
このように少し格上のライバルより有利に営業できる可能性があるので、登録したらインボイスに対応できることを顧客にアピールしましょう。
2.補助金制度を活用できる
インボイスの登録で活用できる補助金制度が2つあります。
持続化補助金 | IT導入補助金 | |
対象 | 小規模事業者 | 中小企業・小規模事業者等 |
補助上限額 | 100〜250万円 (補助率 2/3以内) ※インボイス未登録 :50〜200万円 | ・ITツール:〜350万円(補助率 2/3〜3/4以内) ・PC等:〜10万円(補助率 1/2以内) ・レジ等:〜20万円(補助率 1/2以内) |
補助対象 | ・税理士相談費用 ・機械装置導入費 ・広報費 など | ・ソフトウェア購入費 ・ハードウェア購入費 ・クラウド利用費 など |
参考:財務省
「持続化補助金」は、免税事業者がインボイス発行事業者になることで上限額が50万円加算されるので要チェックです。
「IT導入補助金」は、ITツールについて下限額が撤廃されたことで会計ソフトなども補助対象となり、インボイス登録の追い風に。
補助金制度をうまく活用してお得にインボイスを導入しましょう。
3.業務の効率化が期待できる
「電子インボイス」を用いることでペーパーレス化やリモートワークの促進につながり、コストカットが期待できます。
電子インボイスは「デジタルインボイス」とも呼ばれ、紙ではなくPDF形式などの電子データで交付するインボイスのこと。
データで管理することで
- かさばらないので保管がしやすい
- 郵送のコストがかからない
- メールですぐに送れる
などの業務効率化が図れます。
スキャンしたデータも電子インボイスとして保存できるため、取引先がペーパーレスに対応していない場合でも対応可能です。
適用には電子帳簿保存法の要件(真実性・可視性)を満たす必要があり、クラウドシステムで管理していれば「真実性の確保」はクリアできます。
「可視性の確保」には操作説明書やシステム概要書、検索機能などを備える必要があるので導入する前に確認しておきましょう。
免税事業者がインボイス登録後に活用できる3つの負担軽減措置
「インボイス発行事業者になるメリットはわかったけど、消費税を払う余裕なんてないよ…」
このように思っている人も安心してください。
国で用意した支援措置があるので、活用して少しでも消費税額を抑えましょう。
対象者 | 対象期間 | |
2割特例 | インボイス発行事業者になった方 (2年前の課税売上が1000万円以下) | 2023年10月1日〜 2026年9月30日 を含む課税期間 |
少額特例 | ・2年前の課税売上が1億円以下 ・1年前の上半期の課税売上が5000万円以下 | 2023年10月1日〜 2029年9月30日 |
返還インボイス交付不要 | だれでも | 期限なし |
1.2割特例
免税事業者からインボイス発行事業者になった場合、売上税額の2割を納税額とすることができます。
収支の例(消費税率10%)
- 売上金額:700万円(消費税70万円)
- 仕入金額:150万円(消費税15万円)
この場合の納税額は通常55万円(70万円-15万円)ですが、2割特例を適用すると14万円(70万円×20%)ですみます。
その差はなんと41万円。
知らないで申告してしまうと非常にもったいないですよね。
事前の届け出なども必要なく、税金の申告時に特例を適用するか選択できます。
売上と仕入の金額差が少ない場合は適用しないほうが有利な可能性があるため、状況によって切り替えできて大変使い勝手が良い制度です。
2026年9月30日までの期間が対象ですが、売上がわかれば消費税の計算が可能なためインボイスも保存不要。
消費税だけでなく事務負担も大幅な軽減が期待できるので、インボイス登録を検討する際は必ず確認しましょう。
2.少額特例
2023年10月1日〜2029年9月30日の1万円未満の課税仕入れは、インボイスの保存なしで控除が受けられます。
消耗品費や交際費など細かい経費が多い場合は、事務作業の手間が格段に減るのでうれしいですよね。
この特例を適用したい場合は、支払いを複数回に分割するなどの工夫が必要です。
1個5000円のものを2個購入する場合
- 一度に購入 → 1万円のため対象外
- 2回に分けて清算 → 各5000円のため適用対象
ただし、買い手に要求された場合は1万円未満でもインボイスを発行しなければならないため注意しましょう。
3.少額な返還インボイスの交付が不要
1万円未満の「返還インボイス」は交付の必要がありません。
返還インボイスとは、返品や値引きなどの際に交付する義務があるインボイスのこと。
該当する主なケースとして、振込手数料を売り手が負担する場合があげられます。
実質的に買い手が支払う金額が減るため「値引き」と考えられ、通常は返還インボイスの交付が必要です。
しかし、振込のたびに事務作業が発生するのは大変なため、税制改正によって少額の返還インボイスは交付免除になりました。
すべての人が対象となるため、免税事業者のままでいる選択をした場合でも覚えておくと良いでしょう。
免税事業者がインボイス登録しなくてもいい5つのケース
ここまで記事を読んだうえで、まだ登録するか迷っている人もなかにはいるはず。
どうしてもインボイスの登録を渋ってしまう人のために「免税事業者のままでもいいケース」を5つ紹介します。
自分が該当するか、ぜひチェックしてみてください。
免税事業者がインボイス登録しなくてもいい5つのケース
- 一般消費者に向けたサービスを提供している
- 顧客が免税事業者や簡易課税事業者に限られる
- 消費税の分を減額して請求する
- オンリーワンのスキルをもっている
- インボイス発行が免除になる特例を使用する
1.一般消費者に向けたサービスを提供している
一般消費者向けのサービスを提供している場合は請求書を発行することがないため、インボイス登録しなくても影響がありません。
免税事業者のままでも影響が少ない業種
- 美容院
- マッサージ店
- ネイルサロン
- 学習塾
- スポーツジム など
ただし、飲食店は要注意。
接待などで利用した際にインボイスに対応していないと、法人の顧客は減ってしまうかもしれません。
領収書の発行を求められることがある場合は、法人利用する顧客の割合を加味してインボイス登録の要否を検討しましょう。
2.顧客が免税事業者や簡易課税事業者に限られる
顧客が免税または簡易課税事業者の場合もインボイスの発行を求められないため、免税事業者のままでも影響が少ないです。
簡易課税事業者とは、税務署に届出書を提出して消費税額の計算を簡易的にすることを認められている事業者のこと。
先ほど紹介した2割特例と同じように売上税額に一定割合(業種による)をかけて消費税額を算出するため、売上さえわかれば計算可能です。
インボイスの発行が不要なため、免税・簡易課税事業者としか取引しない場合はインボイス登録が必要ありません。
3.消費税の分を減額して請求する
顧客が負担する消費税分を減額して請求するという対応策もあります。
制度の経過措置として課税事業者は一定割合の税額控除が受けられるため、控除できない分を値引きするイメージです。
免税事業者との取引で課税事業者が受けられる控除
- 2023年10月1日〜2026年9月30日:仕入税額相当額の80%
- 2026年10月1日〜2029年9月30日:仕入税額相当額の50%
2026年9月30日までは仕入税額相当額の100%-80%=20%、2026年10月1日から3年間は100%-50%=50%を免税事業者が負担する形で考えると良いでしょう。
一般消費者や免税・簡易課税事業者との取引が多いけど課税事業者の顧客もいるという場合に有効ですね。
取引先の了承を得る必要がありますが、値引き対応を選択肢の一つとして検討してみてください。
4.オンリーワンのスキルをもっている
自分だけの強みがある人は、免税事業者のままでも取引を継続してもらえる可能性があります。
特別な才能がなくても、複数のスキルを掛け合わせることで自分の価値を高めることが可能です。
スキルの掛け合わせの例
- 台本やデザインを提案できる動画編集者
- 元看護師の経験を生かした医療分野に詳しい特化型ライター
- AIツールを使った高速プログラミングが得意なエンジニア
このように、取引先から「この人の代わりはいない」と思わせる人材になることを目指しましょう。
ただし、優秀な同業者が現れた場合は取引が終了してしまうリスクがあることも覚悟しておいたほうが良いです。
5.インボイス発行が免除になる特例を使用する
農協や卸売市場、ECサイトなどで委託販売する場合、生産者が購入者に直接インボイスを交付するのは困難です。
そのため、委託販売が多い業種にはインボイスの交付を免除する特例が設けられています。
インボイス交付が免除になる特例と主な対象者
- 媒介者交付特例 → ECサイトなどの委託者
- 農協特例 → 農業従事者
- 卸売市場特例 → 生鮮食品などの生産者
ちなみに農業従事者はどの特例も適用できます。
特例によって条件などが異なるので、フリー株式会社のこちらの記事も参考にしてみてください。
免税事業者がインボイス登録から納税するまでの3ステップ
実はインボイス発行事業者になるのはそんなに難しくありません。
面倒な事務作業を大幅に削減できるので、請求書の管理はクラウド会計ソフトを活用しましょう。
インボイス登録から納税までの3ステップ
- 登録申請
- インボイスの交付・保存
- 消費税の申告・納税
1.登録申請
申請方法は「郵送」と「オンライン」の2種類があります。
申請書を郵送する場合は、国税庁のこちらのページから「適格請求書発行事業者の登録申請書」を印刷して記載し、インボイス登録センターに送付。
審査から登録完了までに1ヵ月半ほどかかるので余裕をもって申請しましょう。
急いでいる場合は、約1ヵ月で登録が完了するオンライン申請がおすすめ。
「e-Tax」という電子申告ソフトでWeb申請する方法で、問答形式で申請書を作成できて記入漏れなどを防げるメリットがあります。
マイナンバーカードを用いると登録が簡単ですが、ID・パスワード方式でも登録可能です。
e-Taxの登録にはどちらかが必要
- 電子証明書(マイナンバーカードなど)
- 利用者識別番号・パスワード
e-Taxを利用すると確定申告もWebで完結できるので、より業務の効率化を図りたいならあわせて検討してみてください。
2.インボイスの交付・保存
Tからはじまる13桁の登録番号が届いたら、取引先に提出する書類をインボイス制度に則したフォーマットに変更します。
インボイス記載要件
- 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
- 取引年月日
- 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
- 税率ごとに区分して合計した対価の額 (税抜き又は税込み)及び適用税率
- 税率ごとに区分した消費税額等
- 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称
交付したインボイスの写しは7年間保存する必要があります。
クラウド会計ソフトを使用すると
- 記載要件を満たしたフォーマットで書類を作成できる
- 長期的な管理が簡単
などの利点があり、非常に便利なのでおすすめです。
どの会計ソフトが良いか迷ったら、初心者でも操作が簡単な「freee会計」を30日間無料で試してみてください。
3.消費税の申告・納税
消費税の申告期限
- 個人事業主:翌年の3月31日
- 法人:決算月末日から2ヵ月以内
期限内に所轄の税務署に必要書類を提出します。
所得税の申告期限は3月15日なので混同しないよう注意しましょう。
書面での申告手順
- 消費税申告書の記入
- 添付書類(課税方式によって異なる)を用意する
- 書類を提出し納税する
書面で申告しようとするとこのような手順が発生するため、少し面倒に感じるかもしれません。
また、記載ミスにより過少申告してしまうとペナルティが発生する点も注意が必要です。
こういった申告のミスを減らしたい場合もクラウド会計ソフトが役立ちます。
freee会計の「消費税申告ライト」を使うと、質問に回答するだけでスマホから申告書を作成可能。
消費税の計算には先ほど紹介した2割特例を選択できるので、税負担を抑えられる場合はぜひ活用してください。
消費税額の確定後は税務署・銀行で直接納付するほか、口座振替やインターネットバンキング・ATMでの振込も可能です。
今回紹介した3ステップを参考に、手順を簡略化させて事務負担を軽減しましょう。
インボイス登録後2年間は免税事業者に戻れない
インボイス登録はあくまで任意。
しかし、一度登録すると2年間は免税事業者に戻れません。
今回紹介したインボイス登録のメリット・デメリットや負担軽減措置を参考にして登録するか決めましょう。
登録後はクラウド会計ソフトを使用することで事務作業を大幅に減らせます。
「freee会計」なら所得税の確定申告とあわせて消費税申告ができるので初心者にもおすすめ。
制度の経過措置が6年間設けられているため、その間に自分の状況を考慮して総合的に判断してみてください。
インボイス登録はデメリットしかないと言われる3つの理由
- 売上が減少する可能性がある
- 事務作業が複雑になる
- 登録内容が一般公開される
免税事業者がインボイス登録するメリット3選
- 取引が円滑に進みやすい
- 補助金制度を活用できる
- 業務の効率化が期待できる
免税事業者がインボイス登録後に活用できる3つの負担軽減措置
- 2割特例
- 少額特例
- 少額な返還インボイスの交付が不要